遺言でできる遺言者の「別段の意思」まとめ
更新日:2022年3月19日
遺言できる事項は、民法で規定されてるが、その中には遺言者が別段の意思を表示することができるものがある。
遺産分割の際の担保責任に関する別段の定め(民914)
相続財産に瑕疵がある場合、遺産分割によって瑕疵のある財産を取得した相続人が不測の損害を被ることになり、他の相続人と比較して不公平となるため、共同相続人間の担保責任を認めて相続人間の公平を図っている。
▶︎遺言の中で別段の意思を表示した場合には適用されない。
例えば、「相続人間の担保責任を免除する。」
受遺者の相続人による遺贈の承認・放棄(民968)
受遺者が、遺贈の承認または放棄をしないで死亡した場合、その相続人は、自己の相続権の範囲内で承認または放棄をすることができる。
▶︎遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「△△が遺贈の承認または放棄する前に死亡したときは、△△に対する遺贈の効力を失わしめ、〇〇に遺贈する。」
受遺者の果実取得権(民992)
預金利子、土地建物の賃料、株式の配当などの果実は、遺贈の履行を請求することができるときから取得する。
通常は遺言者死亡のときから。また、停止条件付遺贈においては条件成就のときから、始期付遺贈は期限到来のときから請求することができる。
▶︎遺言者が別段の意思を表示したときはその意思に従う。
例えば、「果実は、引渡し以後に生じた果実から取得するものとする。」
遺言の効力発生前の受遺者の死亡(民994②)
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。死亡した受遺者の相続人が相続するわけではない。
▶︎遺言者が、その遺言で別段の意思表示をすることができる。
例えば、「〇〇が遺言者よりも先に死亡した場合には、当該財産は△△へ相続させる。」
遺贈の無効または失効の場合における目的財産の帰属(民995)
遺贈がその効力を生じないとき、または放棄によってその効力がなくなったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。
▶︎遺言者がその遺言に別段の意思を表示した場合は、その意思に従う。
例えば、「相続開始前に受遺者〇〇が死亡したときは、△△に遺贈する。」
相続財産に属しない権利の遺贈における遺贈義務者の責任(民997②)
遺贈の目的である権利が第三者に属しているときは、遺贈義務者はこれを取得して受遺者へ移転する義務を負うことになる。しかしその第三者は、遺贈義務者からの譲渡の要求に応ずる義務を負うわけではないので、遺贈義務者が目的の権利を第三者から取得できなかったときは、受遺者に対してその価額を弁償しなければならない。
▶︎ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「取得できなかった場合は弁償しなくてもよい」
受遺者の負担付遺贈の放棄(民1002②)
「自分の土地を〇〇に与える。その代わりに、△△の看護・世話をすること。」といった負担付遺贈が、負担の大きさを嫌って放棄された場合、受益者△△が自分で受遺者になることができる。
▶︎ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「〇〇が負担付遺贈を放棄した場合には、代わりに◎◎に同じ条件で当該財産を遺贈する。」
負担付遺贈の受遺者の免責(民1003)
負担付遺贈の目的物の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少する場合、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。
▶︎ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「遺留分回復の訴えによって、負担付遺贈の価額が減少した場合には、次男△△も〇〇の介護・世話について半分の義務を負うこととする。」
特定財産に関する遺言の執行(民1014④)
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。そして特定財産について、遺言執行者は単独で相続登記手続きをすることができる他、預貯金債権の払い戻しや解約が可能である。
▶︎被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「預貯金債権の払戻しは長男〇〇が行うこととする。」
遺言執行者の復任権(民1016①)
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。
▶︎遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「遺言執行者は第三者にその任務を行わせることを禁ずる」
共同遺言執行者(民1017)
遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。
▶︎遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「遺言執行者〇〇は、金融機関の預貯金の払い戻し・解約・名義変更を職務とし、遺言執行者△△はそれ以外の全ての職務を行う。」「遺言執行者らは、それぞれ単独で本遺言を執行することができる。」
遺言執行者の報酬(民1018)
遺言で報酬が定められていない場合、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって、遺言執行者の報酬を定めることができる。
▶︎遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
例えば、「遺言執行者行政書士〇〇の報酬は、当該行政書士の報酬規定に基づき支払うものとする。」
遺留分について、目的物の価額による遺贈・贈与の負担(民1047①二)
受遺者または受贈者は、遺贈または贈与の価額を限度として遺留分侵害額を負担する。受遺者が複数あるとき、または受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者または受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。
▶︎遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
例えば、「遺留分回復請求がされたときは、各々等しい割合で負担する。」
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